2. 放射線を見る ―霧箱―
放射線を直接目で見ることはできませんが,荷電粒子であるα線とβ線の飛跡ならば,気体中の霧の生成によって観察することができます.この観察装置を霧箱と呼びます.エチルアルコールの過飽和状態の中を荷電粒子が通過すると,その通過経路で生成した正,負イオンを核として霧滴が生成されます.したがって,粒子通路に沿って霧滴の列ができ,飛跡として観測することができます.これは,飛行機雲ができる原理と同じです.
この実験では,トリウム Thを含むガスランタン用マントルを用いて実験を行います.
核種 壊変形式 半減期
232Th α 1.40×1010年
↓
228Ra β 5.76年
↓
228Ac β 6.15時間
↓
228Th α 1.91年
↓
224Ra α 3.66日
↓
220Rn α 55.6秒
↓
216Po β 0.145秒
↓
212Pb β 10.6時間
↓
212Bi β 1.01時間
↓
212Po β 0.298マイクロ秒
↓
208Pb 安定核種
トリウムは天然放射性元素の一つで,上図のように放射性壊変によって多くの放射性核種が生じ,最後には鉛Pbになって安定になります.質量数はすべて4の倍数になっています.壊変によって生じるα線とβ線を霧箱で観察し,放射線の性質を調べてみましょう.
実験操作
1. ガラス容器の底に黒色のサテンの布を引く.
2. 2〜3 mlのエチルアルコールを布に均等にかける.
3. 線源をガラス容器の中央に置き,ラップでふたをする.
4. 発砲スチロールの受け皿に冷却フィンを置き,液体窒素を注ぐ.液量は,フィンが3分の1ほどつかる程度でよい.
5. 冷却フィンの上にガラス容器を置き,容器を冷やす.
6. 塩化ビニール棒をティッシュペーパーでこすり,その塩化ビニール棒をサランラップの上にかざす.サランラップが帯電し,ガラス容器内部の雑イオンを除去することができる.
7. この状態で,1〜2分ぐらいすると飛跡が見えるようになります.
a. 飛跡の様子をスケッチしてみましょう.
b. 線源の周りに遮蔽筒を置いてみましょう.筒は,紙とラップでできています.
c. 線源を注射器に入れ,約10分後,注射器内の空気を霧箱内に注入してみましょう.注入するまで,針をゴム詮からぬかないこと.