4.終わりに
この実験では放射線を出す元素の種類を調べることまではしません.では元素の種類を調べるにはどうしたらよいのでしょうか?いくつか方法がありますが,簡単に調べるには(といってもそれ相応の実験装置があっての話ですが),半減期を調べるとともに,出てきた放射線のエネルギーを正確に調べることです.この半減期とエネルギー,2つの情報で放射線を出す元素を割り出すことができます.
この実験を通して,放射性元素は決して特殊でないことが分かってもらえることでしょう.いま元素記号の決まっている元素は109個あります.そのうち,28個が放射性元素です.新しい元素が作られるごと,この数はどんどん増えています(最近,原子番号が118の元素を作ったという報告がされました).実は,宇宙のどこかで星が死ぬときに,もっともっと多くの元素が作られている可能性があります.放射性元素というのは宇宙全体で考えれば,ごく当たり前の元素なのだということができます.
テキスト作成にあたり,以下の論文を参考にさせていただきました.
森雄兒,物理教育 43, 269-272(1995).鎌田正裕他,化学と教育 45, 33-36
(1997).
ミニ用語解説
放射性壊変 :原子核が自然に粒子や電磁波を放出して,別の原子核にかわる現象
放射能 :物質からまったく自発的に放射線が放出される性質.この能力(量)は,単位時間当たりに壊変する原子核の数で表す.
1 ベクレル(Bq)は,1秒間に1個の原子核が壊変する量.
核種 :同一の原子番号および同一の質量数をもつ原子種
半減期 :放射性壊変する核種の寿命を表す方法で,壊変する核種の個数が1/2に減少するまでの時間.それぞれの核種は固有の半減期を持っている.
α線 :放射線の一種で,4Heの原子核である.α線を放出する放射性壊変をα壊変という.α壊変
: AZX → A-4Z-2Y +
42He(α)
β線 :放射線の一種で,電子(β-)または陽電子(β+)である.β線を放出する放射性壊変をβ壊変という.このとき,同時に中性微子(ニュートリノ,
)の放出も伴う.
β-壊変 :AZX → AZ+1Y
+ e- + ν β+壊変 :AZX
→ AZ-1Y + e+ + ν
γ線 :励起状態にある原子核がより低いエネルギー状態へ遷移するときに放出する電磁波.可視光に比べて,非常に波長が短い.β壊変やα壊変と同時に放出されることが多い.