3. 温泉水中の放射能を測定する
温泉の種類の一つに「放射能泉」があります. この温泉水中には天然放射性元素であるラジウム Raやラドン Rnが高濃度で含まれおり,日本では,強放射能泉として鳥取県の三朝温泉,島根県の池田鉱泉,岐阜県の恵那鉱泉,そして山梨県の増富温泉などが有名です. ここでは,増富温泉水を用いて実験を行います.
核種 壊変形式 半減期
222Rn α 3.82日
↓
218Po α 3.10分
↓
214b β- 27分
↓
214Bi β- 19.9分
↓
214Po α 164マイクロ秒
↓
210Pb β- 22.6年
↓
210Bi β- 5.1日
↓
210Po α 138日
↓
206Pb 安定核種
増富温泉水にはかなりRnが含まれており,この放射性壊変により上図のように多くの放射性核種が生じます.本実験では,この中の214Biを化学分離し,半減期や放射能を定量してみましょう.
β線はGM(ガイガー・ミュラー)計数管を用いた測定器で測定します.気体中の電離作用を利用し,放射線との相互作用で生成したイオン(一次イオン)を高電圧をかけることにより雪崩式にイオン数を増幅して電気信号として計数します.
実験操作 (電卓を持参してください.関数電卓が望ましい.)
(自然計数の測定)
1-1. 測定時間を10分に設定して,棚板のみ試料箱に置き測定を開始する.
(214Biの化学分離と測定)
2-1. 温泉水80 mlをビーカーにとり,HNO3 10 mlを加える.
2-2. 共沈剤としてBi(NO3)3・5H2O 100mgと保持担体として硝酸鉛
Pb(NO3)2 50 mgを加え,約5分間よく撹拌する.
2-3. 水酸化ナトリウム NaOH 13 gを加え,溶液中のOH-濃度を約1 mol/lとする.Bi(OH)3の沈殿が生成する.沈澱が生成した時刻を記録すること.水酸化鉛
Pb(OH)2 の沈殿が一旦生成するが,過剰のアルカリにより再溶解する.
2-4. 沈殿を吸引濾過する.
2-5. 5分ほど放置した後,溶液を沈澱と共に遠沈管に移し,遠心分離する.
2-6. 充分に水分を吸引した後,ろ紙を試料皿に糊ではる.
2-7. 測定器で測定する.約1時間ほど測定を繰り返し続ける.測定開始時刻を記録すること.
a. 試料の正味計数率を沈殿生成後の経過時間に対して片対数グラフにプロットしてみましょう.
b. グラフから半減期を求めましょう.
c. 温泉水中の222Rnの放射能を計算してみましょう.